以前、このブログを立ち上げてすぐの頃に
「ベースレイヤーについて」
という記事を上げました。
内容を改めて見たら…すみません、嘘と言っても良い勘違いの内容を含んでいましたのでお勧めのベースレイヤーについては改めて記事に致します。
とりあえず、タイトルの内容ですが…
ヒートテックを始め、吸湿発熱素材は各社から発売されています。
以前は吸湿発熱効果についてポジティブに捉えていて、効果は汗(水分)による湿気を吸収、発熱するという効果を備えています。
汗が出るのは身体を動かした時、または身体の周囲温度が高い時の体温上昇を抑え、体温を一定に保つ為です。大切な大切な身体の持つ能力の一つです。これが無ければ、日本の厳しい夏は越える事はできない。
また、じっとしていても代謝により、僅かに汗は出ます。それは低い気温でも起こり、全く水分を通さないビニール等を纏うと中がしっとりする事でわかります。(この時期、私は手の乾燥を防ぐ為にビニール手袋をする事があるのですが、それで理解しました)
吸湿発熱素材はそんな水分を捉えて発熱します。
なので気温が低く、薄着などで熱が発散し易い状況だと有利かも知れません。全てはバランスですので。比較的に薄い生地で極力暖かさを求めると効いてきます。
しかし、ヒートテック等を着て、ダウンジャケットや厚手のコートなどを着たまま、暖房の効いた屋内に入った時、衣服の内外の温度調節が狂い身体がビチョビチョになった事はないでしょうか?
ウインタースポーツ中は正にそんなシチュエーションが多いです。
まず、ウェアは雪山の気温、強風等のコンディションに対応したつくりである。
当然、寒がりな方ほど着込みますのでより体温を維持し易い、言い換えると熱を発散し難い状況です。
そんな着込んだ状態で吸湿発熱素材のベースレイヤーを着る。
激しく動く滑りをしたり、コブを激しく攻めてみたり。歩いたり、斜面を登ったり。こけたり、もがいたり。初心者程どうしても無駄な動きが多くなる為、すぐに汗が出てきます。反応して更に暖かくなり、更に汗が出ます。
当然、ある程度は汗を素材の外に出そうとする効果はありますが、限界はすぐにやってきます。
その時、身体はビチョビチョです。
さて、汗はそもそも体温維持の為、気化し、表面温度を下げる為にでます。
その結果、汗が冷えて逆に体温維持が困難になるという皮肉な結果に陥ります。
ですのでウインタースポーツに吸湿発熱素材は向きません。風邪を引いた、くらいで済んだら良いですけど…例えば、スキー場の中でもホワイトアウトを喰らって遭難しかかった時にビチョビチョだと低体温症という死に向かってしまう状態に陥ってしまいます。さっさとレストハウスに逃げ込めれば良いんですけど。(ブレスサーモはビチョビチョになった覚えが無いので、上手く厚みを持たせたり配合を調整されているかも知れません。厚手過ぎてスキーに使えなかったブレスサーモの靴下は車中泊において最強でした。ポカポカ。)
登山業界において、綿のシャツは汗で濡れ易い為に厳禁とされています。汗の処理は最重要課題とされていて、「レイヤリング」という手法で極力汗を貯めない様にベースレイヤーは選択されます。
如何に水分を肌に近づけない様にするか。
これが目的です。雨から雪から身体に近づいてくる水分をアウターが弾き返し、身体の中から湧いてくる汗を水分になる前に外に放出する。全てはこの目的の為に山道具の身体に触れる物は設計されています。
水が染み込まないと言う意味の、保水しないまたはし難い素材。そんな素材で近年の山道具は作られています。また山道具ではなくてもそんな素材のものなら流用可能です。スポーツウェアは大概そうなっている筈です。
化繊のポリエステルが代表ですが、ナイロン、アクリルや変わり種のポリエチレンもあります。これは保水ゼロで染み込まないらしいですが、以前買ってみたフォックスファイヤーの物はかなり耐久性が低そう(ペラペラだったのでいつもの貧乏性で保管したままほとんど使用していません。)
スキンズなどのコンプレッションタイツもこの辺りになります。アクリルはニット帽等によく使用されます。
天然素材では、ウール。(羊毛)
これは昔からある保温素材で、空気を纏う(このイメージの究極はダウンです)し、保水し難い。ですが昔の物は重く、何より肌触りが悪かった(チクチク感がする)そうです。私は世代が違うので知りません。
二十年ほど前でしょうか、革命的なウール素材、
「メリノウール」という品種が登場します。保水し難さはそのままに、軽く、何より肌触りが良い。そして臭いがつき難い。ベースレイヤーの素材としては理想的ですが、高価。ハイブランドなら軽く5桁。その内ユニクロなどでも扱われる様になります(セーター等)。大量生産が可能になったと思われます。
因みに、何度も言及したヒートテックは
レーヨン34%、アクリル27%、ポリエステル34%、ポリウレタン5%。
このレーヨンという絹に似た性質の化繊が気化熱と反対の作用で熱を生み出すそうです。考えた人は天才だと思います。レーヨンは水蒸気を水分(気体から液体)に凝縮し、発熱するそうです。
しかし…
そう、わざわざ水分を生み出している。そのまま水蒸気で放出できたら濡れないのに。
濡れないためのアウターを目指し続けるのが、ゴアテックスに代表される防水透湿性素材。水分になる前の水蒸気をさっさと細かい孔から外に出してしまう。真逆を目指しているのがこれで一目瞭然。
アウトドアに向いてそうなのがどちらなのか、この話の何となくのイメージだけでもわかるでしょう?
以上の理由により、ベースレイヤーはブランド名より素材に注目が必要です。左脇のタグに注目してみてください。
この綿6〜70%ポリエステル3〜40%の素材も良くある定番ですが、着心地重視で化繊っぽい肌触りですけどやはり濡れ易いので避けた方が良いかと思います。
綿は肌触りと耐久性は良いです。ですが…です。
ユニクロのエアリズムは優秀ですね、普通にベースレイヤーとして使用できる素材です。
長く長くなったので、ここで一旦切ります。
が、繰り返します。
吸湿発熱素材の肌着はウインタースポーツに向きません。以上です。